金仏壇の修復
1.解体
お仏壇をパーツごとに解体します。
仏壇の外扉・内障子・彫刻などを外した後、各部品をつないであるくさび留めや金具を取り外して分解します。打ち付けてある飾り金具などもすべて取り外します。
2.洗浄
長期に渡りお祀りした仏壇にこびりついたホコリや汚れを、専用の薬品を使ってしっかり洗い落とします。
洗浄後、十分に天然乾燥させ、人工乾燥します。
狂いや割れを防止するため、日陰のある室内で2~3週間、乾燥後の木材の水分を安定させます。
3.木地加工・研磨
木地の凹凸や傷などを埋め、平らに補修します。
木地や彫刻の傷んでいる部分があれば補修や補足を施します。扉・側面板・内部段・台輪等に反りや狂いがある場合は、木地の新調や加工をします。小さな傷は目立たないように補修し、大きな傷は漆を一度剥がし、下地を作って、塗り直します。金具が打ち付けてあった釘穴を埋め、反りや傷みがひどい部分は交換します。
4.下塗り・研磨
下地塗りを施し、研磨します。
下地を滑らかに整えることにより、後に塗装する漆の美しい艶や光沢を際立たせます。
塗師が、胡粉(貝殻の粉末)をニカワで炊いた液を下地として吹き付け、乾燥させます。その後、水を含ませた砥石で練り上げ、ヘラで平滑にし、もう一度乾燥し、その後さらにペーパーで平滑にします。
5.漆塗り
中塗り後、充分に乾燥した後、細かいペーパーで丁寧に研磨します。さらに仕上げ塗りをし研磨します。(吹付け塗装と刷毛による手塗りの二種類があります)塗りと研磨を繰り返し、鏡の様な光沢と奥深い艶を生み出します。
6.金箔貼り
金箔押師が、表面にムラなく均等に金箔を押していきます。金箔・金粉は、剥がれにくく丈夫な箔つけ漆で接着させ、湿度を加えた室の中で二日以上、乾燥させます。金箔は、金沢製の金箔を使用しています。当時の輝きや色鮮やかさを取り戻します。
7.彩色・蒔絵
修復前の蒔絵を落とし、手作業で蒔絵を書きます。
筆で細かい線を描き入れ、金箔や金粉を華やかに施す消粉蒔絵等、伝統の技を駆使し色鮮やかに仕上げます。
8.組立
お仏壇を組み立ます。部材一つ一つ組み立てていきます。取り外した金具や、新調した金具を打って元の姿に組み立てます。扉の障子が破れていた場合は張り替えた後、本体に取り付けます。修復の工程は、新品の仏壇を作るときとほとんど同じ作業工程です。組み立てた後には最終チェックを行います。
※上記の修復工程は一例です。新品の仏壇を作るときとほぼ同じ工程で仕上ます。
修復の内容により上記工程と異なる場合もございます。
修復例
障子
障子骨に欠損が見られ、金箔部分が変色しています。
障子骨の欠損部分を補修し、紗を貼り替え、溜め漆塗装後、金具を調整しました。
障子腰部分には金粉を蒔き、美しい障子が復元しました。
内部
仏壇内部は全体的にくすみ、金箔部分はすす等で汚れ、変色しています。
漆を丹念に塗り上げて、純金箔を丁寧に押し直し、柱部分には彩色を施しました。段部分の金具は新調し、新品同様の輝きと美しさを取り戻しています。
宮殿
煤や汚れのくすみで黒ずんでいた宮殿の屋根も金箔で見違えるように輝きを取り戻しています。
彫刻欠損調整後、細部の彫刻まで丹念に金箔を丁寧に押し直し、鮮やかな彩色を施しました。
蒔絵も施されて見た目も鮮やかです。
欄間
欠損部分を補修し、くすんでいた彫刻部分を洗浄後、金箔を貼り直しました。
金具を新調し、美しい金色の世界が蘇ります。
下台
仏具落下等による凹み・傷が見られます。
膳引きは蝋燭の汚れや傷、金具の錆がありましたが、漆塗装を施し漆黒の艶が蘇ります。